多くの本に伊勢崎銘仙が昭和50年に伝統的工芸品 伊勢崎絣になったとあるが ?
「伊勢崎銘仙」の反物の端には
「伊勢崎銘仙のラベル」が貼られている
*「ラベル」の正式な名称は「検査合格証紙」
組合員の機屋(織元)で「ラベル」貼付けを
希望する際は組合に検査手数料を払い検査を
受け合格した反物に「ラベル」が貼られる
*「ラベル」の貼られている場所は「織り端(おりはし)」、「織りじまい」、
「端末(たんまつ)」と呼称する
伊勢崎銘仙に貼られている「ラベル 検査合格証紙」
左端に「いせさき銘仙」、
右端には 伊勢崎織物協同組合、電話番号、共同企画
絹100%・長さ12m・織巾37cm
織元
「伝統的工芸品 伊勢崎絣」の反物の端には
「伊勢崎絣のラベル」と「伝統証紙」が貼られて
いる
伊勢崎絣にに貼られている「ラベル 検査合格証紙」には
中央に 通商産業大臣指定、伊勢崎絣、伝統工芸品、伊勢崎織物工業組合
右端に 品質表示 絹100% 織元
「伊勢崎絣のラベル」と「伝統証紙」の貼る
場所や位置は指定されている
「伝統マーク」を使用した「伝統証紙」が
「伝統的工芸品 伊勢崎絣」に貼られている
「伝統的工芸品 伊勢崎絣」のラベルには
1、「経済産業大臣指定伝統工芸品」の文字
2、「伝統的工芸品の名称 伊勢崎絣」
3、「特定製造協同組合の名称 伊勢崎織物工業組合」
4、製造した機屋の名称
消費者が伝統工芸品を安心して購入できる
「伝統証紙」にはナンバーが記載されトレーサビレティー
(追跡可能)される
伝統マーク
「伊勢崎銘仙」と「伊勢崎絣」の違いは・・・何故この様な問題が発生したのか?
伊勢崎織物工業組合は昭和50年に伝統的工芸品の名称を「伊勢崎絣」(地域ブランド)
で指定申出書を通商産業大臣に提出し指定された
「伊勢崎銘仙」の名称で何故申出しなかったか?
表1 伊勢崎織物生産高の推移 を解説すると着物離れが年々続き、昭和50年に伝統的
工芸品に指定された年だけが僅かであるが前年より増加した
表2 技法別検査数(昭和43年、昭和46年)を解説すると比較する3年間で解模様銘仙
は半減しているが、逆に括絣は僅かではあるが増加している
伊勢崎産地の低迷は銘仙の代表格である解模様銘仙の販売不振が原因の一因である
以上のことから、伝統的工芸品の名称はアンチ銘仙、ポスト銘仙として、銘仙の名称を避け
「伊勢崎絣」と命名したものと思われる
表1 伊勢崎織物生産高の推移
西 暦 | 和 暦 | 織物総生産高 (千反) |
組合員数 | できごと |
1967 | 昭和42 | 1,696 | 445 | 第二次伊勢崎織物工業組合設立 |
1968 | 昭和43 | 1,547 | 434 | |
1969 | 昭和44 | 1,406 | 381 | |
1970 | 昭和45 | 1,248 | 363 | |
1971 | 昭和46 | 1,144 | 356 | |
1972 | 昭和47 | 1,046 | 287 | |
1973 | 昭和48 | 774 | 267 | |
1974 | 昭和49 | 792 | 245 | |
1975 | 昭和50 | 813 | 237 | 伝統的工芸品に伊勢崎絣が指定 |
1976 | 昭和51 | 682 | 236 | |
1977 | 昭和52 | 578 | 240 | 絹織物用織機共同買上廃棄事業 |
1978 | 昭和53 | 519 | 235 | 昭和52・53年度で911台を廃棄 |
1979 | 昭和54 | 565 | 231 | |
1980 | 昭和55 | 496 | 223 | 織物組合創立100周年 |
1981 | 昭和56 | 429 | 214 | |
1982 | 昭和57 | 383 | 206 | |
1983 | 昭和58 | 298 | 202 |
*関東機業地域の構造変化 付表 (1868~1985) 大明社 1989
表2 技法別検査数(昭和43年、昭和46年)
技 法 | 昭和43年(反) | 構成比 | 昭和46年 (反) | 構成比 |
解 | 357,588 | 32.5 | 211,199 | 30.2 |
括絣 | 222,360 | 20.2 | 227,492 | 32.5 |
緯総 | 194,153 | 17.6 | 71,958 | 10.3 |
板締 | 76,092 | 6.9 | 35,402 | 5.1 |
縞・格子・無地 | 61,911 | 5.6 | 26,660 | 3.8 |
締切 | 48,955 | 4.5 | 17,074 | 2.4 |
併用 | 44,970 | 4.0 | 39,408 | 5.6 |
その他 | 95,118 | 8.6 | 70.844 | 10.1 |
検査数合計 | 1,101,147 | 100.0 | 700,037 | 100.0 |
生産数 | 1,547,344 | 1,144,450 | ||
受検率 | 71.2% | 61.2% |
*昭和49年度伊勢崎和装織物業界診断報告書第4部資料編より
*生産数と検査数には差が生じる、無検査の出荷と生産と検査のタイムラグがある
昭和43年度
製品別生産数量
伊勢崎絹人繊織物構造改善工業組合調べ
*渡辺睦 中小企業における「構造改善」事業の進展と問題点
伊勢崎銘仙と伊勢崎絣の違い(傾向)
伊勢崎銘仙 | 伊勢崎絣 | |
色合い (傾向) |
赤、青、黄色等の原色が多く 使われている |
藍染や草木染の様に地味 |
絣の大きさ (傾向) |
大絣である、反物の幅(37cm)に 4つ(4山)以下の絣 |
中柄、小中(こちゅう) 小珍(こちん)と、絣が小さい |
厚み (傾向) |
薄くて透かすと向こうが見える 「蝉の羽」 |
真綿糸が使用されたものもあり 銘仙よりは厚みがある |
糸 | 経糸:生糸 緯糸:絹紡糸 |
経糸:生糸 緯糸:生糸、真綿糸、玉糸 |
絣糸 | 経糸及び緯糸、緯糸、 経糸(解し模様銘仙) |
経糸及び緯糸、緯糸 |
織機 | 力織機 | 手織機(高機) |
価格 (傾向) |
低価格 | 伊勢崎銘仙よりはやや高額 |
検査 | 組合で自主検査 | 産業経済大臣の認定を受けた検査 方法にて組合で検査 |
産地証票 (ラベル)と 伝統証紙 |
検査に合格したものに産地証票を貼付 | 検査に合格したものに産地証票と 伝産協会の統一証紙を貼付 |
括り絣、板締絣、併用絣、緯総絣が「伝統的工芸品 伊勢崎絣」で、
緯糸が無地の解模様と締切絣は「伝統的工芸品 伊勢崎絣」には該当しない
伊勢崎銘仙 経糸・緯糸 相関マトリックス
緯糸\経糸 | 無 地 | 括 り 絣 | 板 締 絣 | 型紙捺染 |
無 地 | 締 切 絣 | 締 切 絣 | 解 模 様 | |
括 り 絣 | 緯 総 絣 | 括 り 絣 | 併 用 絣 | |
板 締 絣 | 緯 総 絣 | 板 締 絣 | 併 用 絣 | |
型紙捺染 | 緯 総 絣 | 併 用 絣 |
名称(地域ブランド)の変遷
↗ 伊勢崎銘仙
伊勢崎太織 → 伊勢崎銘仙
↘ 伊勢崎絣
享保元年(1716) 明治21年(1888) 昭和50年(1975)
全国に伊勢崎太織の名声知 伊勢崎太織を伊勢崎銘仙 国の伝統的工芸品に
れ渡る と呼称 伊勢崎絣が指定される
伊勢崎銘仙の定義
「伊勢崎銘仙とは伊勢崎産地で製造し、絹を素材とした平物の総称であるが同じ平織物でも
丹前地、黄八丈等とは区別して呼称された」
伊勢崎織物史(昭和41年発行)P25より作成
* 平物、平織物は平織の織物(先染め)の意味
伊勢崎絣の定義
一 伝統的工芸品の名称 伊勢崎
二 伝統的な技術又は技法
1 次の技術又は技法により製織されたかすり織物とすること。
⑴ 先染めの平織りとすること。
⑵ かすり糸は、たて糸及びよこ糸又はよこ糸に使用すること。
⑶ かすり糸のかすりを手作業により柄合わせし、かすり模様を織り出すこと。
2 かすり糸の染色法は、「手くくり」、「板締め」又は「型紙なせん」によること。
三 伝統的に使用されてきた原材料
使用する糸は、生糸、玉糸、若しくは真綿のつむぎ糸又はこれらと同等の材質を有す
る絹糸とすること。
四 製造される地域
群馬県 伊勢崎市
佐波郡境町
新田郡尾島町及び新田町
埼玉県 本庄市
以 上