伊勢崎銘仙アーカイブス

TOP  topページへもどる

 銘仙の三要素  絹紡糸(けんぼうし)

  銘仙を辞書で引くと、
   講談社 日本語大辞典では
    玉糸などで密に織った平織りの絹織物。主として、くず糸を使うので丈夫で安価。
    実用的な和服・夜具地に用いた。

   岩波書店 広辞苑では
    熨斗糸(のしいと)・玉糸・絹諸撚糸または紡績絹糸で織った絹織物。衣類・座布団
    夜具地などに用いる。縞(しま)物・絣(かすり)物などがあるが、大正・昭和前半期
    には実用呉服として需要が多く、さまざまな絣柄が作られた。伊勢崎・足利・秩父など
    が主産地

   以上の説明から銘仙は三要素から成り立っている
    1、銘仙には屑繭(くずまゆ)から作った絹紡糸が主に使用される
    2、織物には色々な織り方があるが銘仙は平織である
    3、銘仙は糸のうちに染める先染めである


 絹紡糸

 屑繭(くずまゆ)を原料とし、これを精練して真綿とし、紡績工程を経て造った糸
  絹紡(けんぼう)、絹糸紡績(けんしぼうせき)、紡績絹糸(ぼうせきけんし)等
 同じ意味を持つ



 1825年から1830年頃 スイスでは
羊毛紡績のノウハウを活かした絹糸紡績が発達
していた
 当時日本では屑繭は二束三文で取引されていた
それがスイスでは生糸に負けない上等の絹糸を
屑繭から造り出していた
 絹紡糸は均一で作業性も生糸に比べ良い
  (絹紡糸は正に魔法の絹糸)




  明治10年に操業を開始した新町紡績所(しんまち ぼうせきしょ)
   (所在地 高崎市新町2330)



 明治6年ウィーン万国博覧会に出席した
工務部の佐々木長淳はスイスへ行き、帰国
するや絹糸紡績の創業を進言
 ①温井川が近く水車が使える
 ②富岡製糸場が近く安定して屑繭が入る
このことから新町が選定された





  壁面に「新町絹糸工場」の文字が見える赤レンガ倉庫
  現在食品工場として稼働中なので一般に公開されていない
  平成21年(2009)11月 「高山社を考える会」で特別に見学ができた
  (旧新町紡績所は国重要文化財指定の答申)



 絹紡糸(けんぼうし)とは何か ?
   養蚕農家が繭(まゆ)を育てます(蚕は家畜です)
   繭の中には生糸にならない屑繭(くずまゆ)が有ります
   また、製糸場においては屑糸(くずいと)が発生します

  屑繭(養蚕農家や製糸場で発生します)
  ①出殻繭(でがらまゆ)
   繭の中の蛹(さなぎ)が蛾(が)になって繭に穴を開けた繭
   穴が開いているので糸が長く取り出せない



②不良繭(ふりょうまゆ)
 糸口が見つからない繭、つぶれた繭等








  屑糸(製糸場の工程で主に発生します)



①生皮芋(きびそ)
 蚕が繭を作る際に最初に吐き出す糸、太くて硬い ことから生糸に使われない 繭の糸口から50~ 60m位の部分







②比須(びす)
 生皮芋(きびそ)とは反対に繭の最後の部分40 ~50m位で蛹(さなぎ)に近く蛹の油がついて いる部分











製糸場の工程で発生する屑糸(副蚕糸、副産糸)の割合は8%近い
(繭の糸の平均的長さ1300mに対して屑糸
は約100mである)








 絹紡糸(絹糸紡績糸)のメリット・デメリット

  メリット
  1、絹紡糸の価格が安い
  2、糸が均一で、作業性が著しく良い・・・染め、織りが容易で大量生産可能となる

  デメリット
  1、生糸に比較して光沢無い
  2、屑糸、屑繭から製造されているので、イメージが良くない

 日本は絹紡糸の国産化を図るため新町屑糸紡績所(内務省勧業寮 屑糸紡績所)を現在の
 高崎市新町に明治10年10月完成した




         新町屑糸紡績所の変遷と伊勢崎織物業組合

西 暦 和 暦  新町屑糸紡績所の変遷   伊勢崎織物業組合
 1877  明治10  内務省勧業寮 屑糸紡績所が
絹紡糸の操業開始 京都の
丹後ちりめんに用いられた
 
 1882  明治15  新町紡績所と改称  
 1883  明治16  絹紡糸に加え紬糸の生産開始  
 1887  明治20 三井家に払い下げ
新町三越紡績所となる 
 フランス産の絹紡糸を使用する
 1891  明治24    組合事務所・講習所の新築の募金で
新町紡績所から壱百円を戴いた
 1902  明治35  絹糸紡績株式会社(三井系)  
 1909  明治42  紬糸だけの生産となる  
 1911  明治44  鐘淵紡績株式会社に譲渡され
鐘紡新町工場となる
 
 1921  大正10  製糸工場を併設  
 1973  昭和48  新町工場長に伊勢崎出身の
石原聰一氏
就任
 
 1975  昭和50 絹紡糸の操業停止し
食品工場となる
 
 2007  平成19  クラシエホールディングス
になり現在にいたる
 
     *新町紡績所は食品工場のために見学は難しい
      問合せは よみがえれ!新町紡績所の会





 お薦めの見学先 長野県上田市上丸子1078 シナノケンシ株式会社内 絹糸紡績資料館
                     電話0268-41-1800 内線1500





 平成27年5月 絹糸紡績資料館を見学
シナノケンシ株式会社の敷地内にノコギリ屋根
の日本で唯一の絹糸紡績の資料館がある











 絹糸紡績資料館には
 絹紡糸を解説したパンフレットが
 置いてある