伊勢崎銘仙アーカイブス

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 技法シリーズ②  板締絣

 括り絣  技法シリーズ① 括り絣(くくりがすり)
 板締絣  技法シリーズ② 板締絣(いたじめがすり)
 併用絣  技法シリーズ③ 併用絣(へいようがすり)
 緯総絣  技法シリーズ④ 緯総絣(よこそうがすり))
 解模様  技法シリーズ⑤ 解模様(ほぐしもよう)
 締切絣  技法シリーズ⑥ 締切絣(しめきりがすり)
 銘仙用語  伊勢崎銘仙用語辞書









 伊勢崎銘仙
 板締絣















             伊勢崎銘仙 経糸・緯糸 相関マトリックス

 緯糸\経糸 無   地  括 り 絣  板 締 絣  型紙捺染
 無   地    締 切 絣  締 切 絣  解 模 様
 括 り 絣  緯 総 絣  括 り 絣    併 用 絣
 板 締 絣  緯 総 絣    板 締 絣  併 用 絣
 型紙捺染  緯 総 絣      併 用 絣



 板締絣NOW

  テレビ東京で平成28年2月に放送した 和風総本家スペシャル「東北の職人24時」で
 山形県西置賜郡白鷹町(しらたかまち)の小松織物工房6代目 小松寛幸(こまつ ひろゆき)
 氏が取り上げられていた
  番組では、現在板締めをする工場は全国で白鷹町の2軒のみとなっていると解説し、その内
 の一軒が小松織物工房
  テレビと同様の内容の動画が
    平成14年(2002)に作成されている  山形ふるさと塾アーカイブ



 プロローグ


 群馬県には板締の技法(後染めを含む)が用いられた産地が4ヶ所存在した





1、伊勢崎産地の板締絣

2、邑楽郡の中野絣(綿織物の白絣)
  昭和50年(1975)頃まで生産

3、高崎の吉村染工場の紅板締
 (後染めの長襦袢等)
  明治22年(1889)~昭和7年
 (1932)まで生産

4、桐生織の経絣紋織








 伊勢崎絣・板締絣(いたじめがすり)





伝統的工芸品伊勢崎絣 板締絣

井桁(いげた) 井戸の上部を木で四角に囲う紋様






 板珍(いたちん)

  全国の銘仙産地の中で伊勢崎産地は全ての絣技法を所有している
  その絣技法の中で括り絣と板締絣を珍絣(ちんがすり 又は ちんほう)と呼称し
  更に板締絣を板珍(いたちん)と言う


 ルーツは 夾纈(きようけち)

  夾纈は奈良時代に行われた染色法で、二枚の薄板の間に布を挟み、板に彫り抜いた
 紋様の部分から染料を染み込ませ染める 奈良県の正倉院宝物に存在する


 大和(奈良県) → 伊勢崎 → 村山大島紬



明治20年(1887)大和国(奈良県)より茂呂村
(現伊勢崎市茂呂地区)に板締絣の染法が伝授された
大正7年(1918)伊勢崎の板締絣の技法が更に東京都武蔵村山市の
   村山大島紬に導入された
NHKデジタルアーカイブスに村山大島紬の動画が公開されているので
百聞は一見に如かず 検索しご覧下さい
   NHKデジタルアーカイブス → 村山大島紬 で検索




 板締の原理を説明(小学生向けの実験)





 ①下駄の歯の間に布を挟み強く固定する
 ②絵具を溶かした液に全体を浸ける
 ③布を取り出し乾かす
 ④上手くすると布の歯の所に色が着かない









下駄の歯を横から見るとパルス波形である
正にデジタルの世界である

板締(夾纈)のルーツはインド、中国である
日本には八世紀に大陸から伝えられた





 括り絣と板締絣の違い

  反物の横幅9寸8分(約37cm)にいくつの山(柄)があるかにより技法が決まる
  特に明確には定義されていない、山(柄)の大きさにもよるが・・・
  板締絣は数の多い小さい柄を得意とする
   1、大柄 概ね4~6山以下           括り絣
   2、中柄 概ね7~20山            括り絣と板締絣
   3、小中(こちゅう) 概ね21~40山     板締絣
   4、小珍(こちん)  概ね40山以上      板締絣

  板締絣は概ね地味な柄が多い
   地色は黒、紺、こげ茶、ねず、オリーブ等に限られる

  板締絣は量産システムである
   括り絣は肉筆で板締絣は版画に例えられる
   板締絣は絣板を彫る初期コストがかかるが大量生産が可能である
   現在の様に着尺が売れない時代には量産の板締絣は難しい

  板締絣では「地糸」は経糸・緯糸ともに「絣糸」とは別に染める
   生地の基調の色となる、柄が染め分けられていない糸を「地糸」、柄を表現するため、
   染め分けられる糸のことを「絣糸」という 板締するのは「絣糸
」である
   板締絣を扱う機屋は「地糸」を事前に大量に染めておくので足引き(あしっぴき)になる
   ことがある ・・・足引き:絣糸と地糸の色が合わない きず物である

  絣板
   板はミネバリの木が主でハナ(山桜)も使う
   板の寸法は柄により違うが 概ね縦横約一尺(約30cm)、板厚三分(約1cm)




     板締絣のプロセスチャート







 板締絣の製造工程

①機屋が柄絵を用意し
 板締染色工場へ渡す
②板締染色工場から馴染みの
 板屋へ板彫(いたぼり)を
 発注する
③板屋は柄絵から寸法を計算し
 手彫と機械彫で絣板を仕上げる
③板締染色工場において
  板巻 絣板に糸を乗せる
  板積 板巻した絣板を90枚
     近く立体的に積み上げ
     ボルトで締める
  浸染 板積を染液に浸ける









絣板彫(かすりいたぼり)

板に柄絵とおりに彫るのは勿論のこと
板の管理、保存が大変である
絣板が曲がるために板舟(いたぶね)に水に
浸けて保存する








板巻(いたまき)

絣板の上に糸を乗せる
写真を見ると絣板はベニヤ板の様に薄い











板積(いたづみ)

板巻した絣板を90枚近く積上げ
太い鉄棒4本を使いボルトで締める









浸染(しんぜん)

湯通し(ゆどうし) 湯に浸ける
 糸の糊(のり)を落とす
 絣板が湯を含み膨張する
ボルトを締め直す
染液に浸ける
もう一度、湯通し乾燥させる、




 板締では一色きり染色出来ないので必要に応じて
 板締で色の付いていない箇所に摺込捺染で染色する(括り絣のページを参照のこと)





  以下は伊勢崎絣の板締絣とは直接関係のない 高崎市の染色業の参考資料





 高崎市の紅板締は昭和7年に姿を消した
それから74年後の平成18年に
 たかさき紅の会 吉村晴子氏らは20回の試作を
行い復元に成功

 「一度途絶えた技能・技術を再現することは
  用意で無い」


 吉村染工場・吉村家の子孫の方々が関係する設備
や資料を保存されていたことが復元の重要な要因





 よみがえる紅 -高崎の絹と染工場ー
  発行 たかさき紅の会 平成17年
  制作 上毛新聞社 非売品
  伊勢崎市立図書館、群馬県立図書館で閲覧可能








平成16年(2004)
高崎で染色業をされている清水英徳
(しみず ひでのり)氏から自分史を頂いた
  「思い出すままに」
清水氏は高崎捺染協同組合理事長を務められ
氏の自分史を通して高崎の染色業を知るとこ
が出来る









   群馬県立図書館で閲覧可能