伊勢崎銘仙アーカイブス

TOP  topページへもどる

SAITOU  括り絣は「かすり工房 さいとう」齋藤定夫氏のページを参考に

 技法シリーズ①  括り絣

 括り絣  技法シリーズ① 括り絣(くくりがすり)
 板締絣  技法シリーズ② 板締絣(いたじめがすり)
 併用絣  技法シリーズ③ 併用絣(へいようがすり)
 緯総絣  技法シリーズ④ 緯総絣(よこそうがすり))
 解模様  技法シリーズ⑤ 解模様(ほぐしもよう)
 締切絣  技法シリーズ⑥ 締切絣(しめきりがすり)
 銘仙用語  伊勢崎銘仙用語辞書




             伊勢崎銘仙 経糸・緯糸 相関マトリックス
 緯糸\経糸 無   地  括 り 絣  板 締 絣  型紙捺染
 無   地    締 切 絣  締 切 絣  解 模 様
 括 り 絣  緯 総 絣  括 り 絣    併 用 絣
 板 締 絣  緯 総 絣    板 締 絣  併 用 絣
 型紙捺染  緯 総 絣      併 用 絣


 括り絣(くくりがすり)





 伝統的工芸品伊勢崎絣 括り絣










 珍絣(ちんがすり、ちんほう)

  全国の銘仙産地の中で伊勢崎産地は全ての絣技法を所有している
  その絣技法の中で括り絣と板締絣を珍絣(ちんがすり 又は ちんほう)と呼称する




 伊勢崎の風物詩
農家の庭での括り作業
15mから30mの長さ

家族総出の括り作業、その家ごとの得意な
絣紋様があった





 ネーミング 「縛り(しばり)」は名称が良くない 「括り(くくり)」に変更か ?


  広辞苑で括り(くくり)を調べると「括り染め」の略とある
  伊勢崎産地では古くから「縛り(しばり)」と呼称していたが
  昭和49年の伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)の公布により「技術又は
  技法」の呼称が結果的には全国的に統一され、伊勢崎産地では昭和50年5月の伝統的
  工芸品の指定により「縛り(しばり)」から「括り(くくり)」と呼称するようになった


 ルーツ 遥かインドからの伝播

  括り絣のルーツはインドであると言われている
  「染める」技術は「染めない」技術でもある・・・・正に二進法の世界である
  0(ゼロ)を発見したインドである
  染色技術は防色技術でもある
  糸をポリエチレンテープ等で括る箇所と括らない箇所である
  
  福井貞子著 「絣」 法政大学出版 によるとインドのイカットの技法がフィリピンから
  大和、関東へのルートを紹介している
  伊勢崎産地の括り絣の四関連工程 墨付(すみつけ)、摺込捺染(すりこみなっせん)、
  締括(しめくくり)、浸染(しんぜん)は弘化3年(1846)に確立したとしている




      括り絣のプロセスチャート


括り絣の製造工程

①精密な図案を方眼紙に画く
(機屋が用意する)


   絣縛り職人の工程
②図案を基に整経された経玉を
 屋外等で一疋(30m)又は
 一疋を折り返した長さで張る
③糸に図案の寸法に合わせ
 墨付(すみつけ)をする
④図案の配色により墨付け部分に
 染料を付けた捺染棒で上下から
 はさみつけ摺込捺染(すりこみ
 なっせん)をする
⑤染色部分が乾いたら、その所を
ポリエチレンテープ等でしっか
 と締め括る(しめくくる)

  紺屋 絣染職人の工程
⑥絣染織人にわたし地糸を同じ
 染料槽に入れて染める
 浸染(しんぜん)




 括り絣全体の工程管理は機屋が行うが絣縛り職人と絣染職人のコラボが必須条件である




墨付で寸法を出し
摺込捺染で染色する
染色した部分をポリエチレンテープで括る
括り絣職人の作業は一旦ここで終わる

次工程の絣染職人により
染色されていない部分と地糸を染料槽で
浸染する




 伊勢崎産地の括り絣について






墨付(すみつけ)

意匠図案通り摺込捺染をする箇所に目印を
墨で付ける








摺込捺染(すりこみなっせん)

墨で印を付けた箇所に捺染棒2本で上下にはさみ
交互に動かし摺込む様に捺染する
糸の張りが強くないと糸が荒れる(糸どうしが
絡む)
指定された箇所で且つ束ねられた糸の芯まで一様
に捺染するには熟練を要求される





締括(しめくくり)

摺込捺染をした箇所が乾いたら、この箇所を
ポリエチレンテープ(古くは綿糸を使用した)
で括り、次工程の浸染で染料が染み込まない
様にする
原糸、浸染液の濃度、絣紋様の大小、括りの太細
により括りの強さの加減を調整する





浸染(しんぜん)

紺屋(こうや)、絣染織人に渡し染料槽に入れて
染める 浸染である
浸染後の糸は乾かないうちに再び絣縛り職人に
戻され、テープを解きほぐし、絣の柄合わせを
して絣崩れないように所々を縛り、適度の張力
を加え十分に乾燥させる




 絣縛り職人の出来、不出来は完成した伊勢崎銘仙・伊勢崎絣の検査において
   巾不足、柄崩れ、色段、耳不整に影響する


 銘仙は所詮銘仙でしかない

   伊勢崎産地に昔は括り絣の総柄ものがあった
  総柄ものは絣縛りや機巻きも高度の熟練者でなければ作れない特殊技術品である
  「銘仙は銘仙でしかない」価格の面で結城や本場大島に及ばなく、併用の出現に
  より伊勢崎産地から括り絣の上物は姿を消して行った
     (伊勢崎史話 機屋おぼえ書 森川健太郎著より抜粋)


 伊勢崎産地 括り絣の近況

   平成18年(2006)8月に呉服小売大手「たけうち」が倒産し着物市場の1割
  600億円が消えた
   伊勢崎産地への影響は直接的には無いが機屋の中には近県の織物産地の仕事をしている
  機屋もおり間接的には影響はあったと聞く

   伊勢崎銘仙復刻プロジェクトで括り絣を担当した富澤治美氏は模様銘仙の木嶋一雄氏
  とペアで平成24年(2012)まで生産は続いた

 齋藤定夫氏の取り組み

   「かすり工房 さいとう」を主宰する齋藤定夫氏は現在も現役で伊勢崎銘仙(伊勢崎絣)
   括り絣の機屋である
   伊勢崎産地のカテゴリーでは機屋であるが、作家と言った方がほうが相応しい
   機屋の家に生まれた2代目で、括り絣の全てを知り尽くしている
   着尺の需要減、下職の高齢化問題、自分の納得したものを作りたい
   このことから、少量ではあるが全ての工程を一人で熟し、買継を通さないで販売する
   これは伊勢崎産地の常識への挑戦であるが、見事に生き残ったと言える
   齋藤定夫氏が今一番心配していることは、伊勢崎産地の火を消さないことで
   現在も数人の弟子を取り後継者養成に尽力されている