伊勢崎銘仙アーカイブス

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 銘仙産地比較 秩父銘仙

  *伊勢崎産地にバイアス(偏り)が在りますのでご了承下さい

      平成25年12月26日秩父銘仙が国の伝統的工芸品に指定された
      消えかけた銘仙がいくらか明るさを取り戻した






 主婦之友 昭和5年10月1日号
 「秩父銘仙」モデル

 左 水谷八重子
 右 香推園子  帝国キネマ
























 プロローグ

  秩父の名前から何を浮かべるでしよう
 秩父盆地、秩父事件、秩父セメント、秩父鉄道
 観光では芝桜、秩父夜祭
 秩父の機屋出身の大物政治家 荒舩清十郎
 秩父の観光大使 笑点メンバーの林家たい平
 秩父の名前は広く知れ渡っています






 

 明治5年に富岡製糸場が操業を開始、
しかし 増税等で 松方正義デフレになり
繭相場の暴落へと続いた
 明治17年秩父地方の農民は貧困から「秩父事件」
を起こした
 それから10年・・・・・

平成22年(2010)3月横浜関内大ホールにて
ミュージカル「愛しの銘仙 機織り物語」が上演された
主催 公益社団法人服装文化研究会
後援 秩父市教育委員会、秩父織物協同組合
   伊勢崎織物協同組合 等





 群馬県、伊勢崎産地との関わり

  秩父地域は群馬県の南西部多野藤岡地域に接し古くから経済・文化・生活面の交流がありま
 した
 明治17年(1884)に秩父事件が起きるが、群馬の多野藤岡地域からの参加者もいた

  伊勢崎に明治19年(1886)染色学校が開校するが、昭和初期の卒業生名簿には秩父
 在住者が何人か確認できる

  模様銘仙においては明治41年(1908)秩父郡横瀬村の坂本宗太郎が特許を取得したと
 あるが、伊勢崎産地では明治42年の頃 下城弥一郎(三代目 初代の四男 勝磨 かつまろ)
 と従業員の白石海(しらいし かい)が成功し、後に特許28916号を取得している

  また、秩父織物の歴史資料の中に明治後期に両毛(伊勢崎、桐生、足利)の先進地より染色
 捺染の技術者が秩父へ移住してきたとの記載がある

  明治後期から昭和初期にかけて銘仙は黄金時代(最盛期)であった 伊勢崎産地の機屋は
 秩父近くまで農家への出機(でばた)で生産を上げた
  秩父産地は山岳部であり、機織工場が主である 群馬の多野藤岡地域から年季奉公の少女が
 秩父の織物工場へと多数出かけた

 

 伊勢崎産地と秩父産地の間に埼玉県本庄の機屋が存在

  利根川を挟んで北に伊勢崎市、南に本庄市である(利根川の氾濫で一部地域では逆もある)
 伝統的工芸品伊勢崎絣の製造地域には埼玉県の一部を含んでいる



 埼玉県深谷市(旧大里郡岡部町)在住の
伊勢崎絣伝統工芸士(製織部門)大塚シナさん
とお会いした際に、
 近所の女性はみんな伊勢崎銘仙を織っていた
機織りの音を聴くだけで織子の技量や癖が分った
と話された





  大塚シナさんの叙勲祝賀会 平成19年11月(埼玉県本庄市にて)
  写真は大塚シナさんを中央に、左は伊勢崎織物協同組合理事長 田村直之氏


  伊勢崎織物同業組合が明治31年に発足し 昭和4年の組合定款変更により埼玉県児玉郡
 織物同業組合の解散を条件に埼玉県の一町八ヶ村(児玉郡本庄町、旭村、仁手村、藤田村、
 賀美村、神保原村、共和村、東児玉村、北泉村)が編入した
  伊勢崎織物同業組合史によれば、当時の埼玉県地方は「年を追うて伊勢崎織物の元機屋勃興
 したり、現在生産者五十余名を算し年産八萬疋に及ぶ、而して織物種類は、大絣の属するもの
 を最とし、文化絣銘仙の類亦相当に生産せらる」と記載がある

  一方、埼玉県本庄の機屋は伊勢崎珍絣の過半数を生産し「本庄の織娘(おりこ)が伊勢崎
 銘仙を織る」と語っている
  本庄の機屋は現在の本庄市、児玉郡下一円、大里郡や秩父郡長瀞町の方面まで伊勢崎銘仙の
 織娘を求めた

 大正10年(1921)5月17日 上毛新聞の記事より
                「賃織工女争奪 秩父と伊勢崎」

   埼玉県児玉郡本庄町地方は伊勢崎織物の独占地にして、児玉町以南は秩父織物独占し、中
  央より西部にわたりて、両機業家常に賃織工女の争奪戦を交へつつあり。
   春蚕期に際して、一時賃織を休止せる者、郡下一般にわたりて多き模様なるより、伊勢崎
  地方の機業家はこの機に乗じ、秩父銘仙の織工女を横取りせんと暗々裡に活躍しをれる。
   かくの如きなるを以て、工女等はいづれに就きてよきか、心中動揺しをれるものの如し。





 昭和47年(1972)の
伊勢崎産地の機屋○1軒と
出機●1集落の分布図

 神流川の東と利根川の南の
赤い線の部分が埼玉県である
 伊勢崎産地のテリトリーは
埼玉県北部から秩父近くにまで
及んでいた


「関東機業地域の構造変化」
辻本芳郎他編 1989 大明堂
より伊勢崎周辺における機屋の
分布から抜粋





      伊勢崎産地の機屋、出機の分布図



 秩父銘仙の歴史研究の本


群馬県立図書館で借りてきた秩父銘仙に関する本
 一番わかりやすいのが
「機織唄の女たち 聞き書き秩父銘仙史」
      井上光三郎書 1980 東京書籍
 後に500円で「日本の古本屋」にて購入

 その他
「秩父織物変遷史」復刻版
      1992 埼玉県立浦和図書館
「秩父織物工業組合史」復刻版
      1991 埼玉県立浦和図書館
秩父地域絹織物史料集」
      柿原謙一編 1995 埼玉新聞社




  最近の秩父銘仙に関しては井深智容(いぶか ちひろ)さんが平成17年(2005)に
 書かれた卒業論文 「秩父銘仙のこれから」 がネット上にあります



 秩父銘仙を経済産業大臣が指定した官報告示

  経済産業省告示第261号
  平成25年12月26日
  経済産業大臣臨時代理 国務大臣 石原伸晃

 一 伝統的工芸品の名称 秩父銘仙
 二 伝統的な技術又は技法
  1 無地銘仙及び縞銘仙にあっては、次の技術又は技法により製織された織物とすること。
   ⑴ 先染めの平織りとすること。
   ⑵ 糸の精練及び染色は浸染によること。
   ⑶ よこ糸の打ち込みには、「手投杼」若しくは「踏木による飛杼」又は有杼織機を用
     いること。
  2 模様銘仙にあっては、次の技術又は技法により製織された織物とすること。
   ⑴ 平織りとすること。
   ⑵ 糸の精練及び染色は浸染によること。
   ⑶ たて糸は、仮織りした後、「解し捺染」を行うこと。
   ⑷ よこ糸の打ち込みには、「手投杼」若しくは「踏木による飛杼」又は有杼織機を用
     いること。
   ⑸ 製織は「解し織り」によること。
 三 伝統的に使用されてきた原材料
    使用する糸は、生糸、玉糸、若しくは真綿のつむぎ糸又はこれらと同等の材質を有す
    る絹糸とすること。
 四 製造される地域
    埼玉県 秩父市
        秩父郡横瀬町
        秩父郡小鹿野町
        秩父郡皆野町
        秩父郡長瀞町
 五 指定年月日
    平成25年12月26日
                        以 上

 解 説

  1、工芸品名 秩父銘仙
    「無地銘仙」 草木染、染料による先染平織
    「縞銘仙」  太織、縞、格子等の縞織
    「模様銘仙」 解し捺染による花柄、植物柄、抽象柄等の模様織
  2、申出者  秩父織物振興協議会
    秩父市内の20社で構成(市内の製造業者25社)
    平成22年(2010)11月
     秩父織物商工組合(買継商等)、秩父織物協同組合(機屋等)、
     秩父捺染協同組合(染色業者)の3組合で任意団体を設立
  3、伝統的工芸品の特徴
    経糸を仮織りして模様を手捺染し、手捺染した経糸を解しながら本織りする
    他産地との違いは、緯糸に補色を用いることで玉虫光沢が得られる
    デザインは植物柄が多く、紫、赤、茶等の落ち着きのある柄が多いのが特徴


 産業構造審議会 商務流通情報分科会 伝統的工芸品指定小委員会

 日 時:平成25年11月29日(金)
 場 所:経済産業省本館
 出席者:   

 委員長 宮田 亮平 東京藝術大学学長
 委 員 秋葉 和生 (一財)伝統的工芸品産業振興協会常務理事
  加藤  寛 伝統的工芸品アドバイザー
  小山  織 インテリアスタイリスト
  棚町 敦子 株式会社アシェット婦人画報社美しいキモノ
エディトリアル・スーパーバイザー
  御手洗照子 有限会社ティーポット代表取締役
  山内 雄気 同志社大学商学部助教
  花岡 興史 株式会社九州文化財研究所取締役研究部長
  大野 幾生 愛知産業大学造形学部デザイン学科教授
  久保 智康 京都国立博物館名誉館員 叡山学院教授

 
  議事 伝統的工芸品(秩父銘仙)の新規指定について


 秩父銘仙伝統工芸士に6人が認定

  平成27年(2015)2月25日、秩父で初となる国の伝統工芸士に6人が認定された
 秩父市の新井啓一さん(80)、新井ヤスさん(81)、逸見和夫さん(77)、
 倉林染さん(82)、国本実さん(74)と、長瀞町の横山敬司さん(80)
 平成25年(2013)12月26日に秩父銘仙が国の伝統的工芸品に指定されたのを受け
 て平成26年(2014)10月に試験が行われた
  その後2名が認定され8名となった


 部門  氏 名
 染色  横山敬司
 製織  新井啓一
 製織  新井ヤス
 型染  国本 実
 総合  逸見和夫
 製織  倉林 染
 製織  浅見義之
 総合  北村久美子

























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